悔しい優勝…。これが2022年シーズンの開幕戦で味わった気持ちだった。
昨年は、EWC世界耐久選手権にフル参戦したため全日本ロードレース選手権には、2戦しか参戦できずランキング10位となった。2022年シーズンは、再び全日本ST1000クラスに日本郵便Honda Dream TPからエントリーする。Honda CBR1000RR-Rはマイナーチェンジを受けたが、それに加えてサスペンションをオーリンズからSHOWA、ブレーキをブレンボからNISSINに変更したことが大きなことだった。
今年、最初の走行には2022年型のマシンが間に合わず、去年型に今年使う足回りを装着して感触を確かめ、前週に行われた事前効果テストから本格的に走り込んでいく。サスペンションのココを変えれば、こんな乗り味になるという特性を把握し、新しくなったECUの電子制御のセットを進めていった。
レースウイークに入っても、足回りや電子制御を主にセットアップしながら例年より低くなった気温に合わせていき、走る度にマシンは、よくなってきていた。
土曜日に行われた公式予選でもセットを進めながら、最後にタイムアタックに入る。他のマシンに引っかかりながらも、タイムを刻み、1分50秒393をマークしポールポジションを獲得した。
それでも満足いく状態ではなく、日曜日朝のウォームアップ走行、そして決勝に向けてもマシンをアジャストしていった。
裕紀の走るST1000クラスの前に行われたJSB1000クラスレース2のスタート前に雨が降り出し、路面はウエットになるが、JSB1000のレース中に雨は止み、ライン上はドライとなっていた。これを見た裕紀は、迷わずスリックタイヤをチョイス。結果的に、この判断は正しかった。
好スタートを切った裕紀は、ホールショットを奪うとレースをリードしていくが、90度コーナーで渡辺選手にかわされ2番手にポジションダウン。そのまま渡辺選手を追っていく。レースは、裕紀と渡辺選手との一騎打ちとなった。逃げる渡辺選手、追う裕紀。渡辺選手も同じパッケージだけに負けられない。新旧チャンピオンの意地と意地がぶつかり合う。
レースも残り4周となったところで渡辺選手がスパート。これに裕紀も呼応し、ついていくが、勝負できるところまでいけないでいた。バックマーカーも多く、行く手を遮られる場面もあった。そのまま2番手でチェッカーフラッグを受けたが、渡辺選手にペナルティがあり繰り上げで優勝となった。これで3年連続でST1000クラス開幕戦を制したことになる。しかし、結果は優勝でも勝負には勝てていないだけに悔しさが残るレースとなった。
高橋裕紀「ホームストレートに戻って来たときにスタッフが1位のところにいたので“何で?”と思いましたが、ペナルティとは知りませんでした。トップでゴールしていなので、すごく悔しい気持ちです。ただ、それを忘れさせてくれるくらいの応援を日本郵便さんを始めファンの皆さんがしてくれたので救われました。本当にありがとうございます。レース中は、ライバルに対して自由度が少なく感じたので、その辺りを改善して次こそトップでゴールしたいですね」