全日本ロードレース選手権第3戦が大分県・オートポリスで行われた。前戦の鈴鹿2&4レースを終えてから、右肩の診察をすると経過は思わしくなく一度クリーニング手術をした方がいいという判断がくだされた。鈴鹿8耐のために一刻も早く手術をした方がいいという意見もあったが、オートポリスラウンド後に手術を行うことになった。
鈴鹿ではテーピングで固めて乗っていたが、鈴鹿ラウンドから約3週間が経ち、回復している部分もあり、コースレイアウト的にも鈴鹿よりオートポリスの方が問題なさそうなため、テーピングをせずに走り始めた。
マシンセットは、1台は鈴鹿からの流れで、もう1台は違うセットで進めて行った。また、鈴鹿8耐を見据えスイングアームのテストも行い、清成選手と意見を交換しながらデータを取っていった。
今シーズン初めてノックアウト方式で行われた公式予選。金曜日、土曜日と快晴となったオートポリスだが、日曜日は雨予報がずっと出ていた。雨だけならいいが、オートポリスは霧が出てくると走行ができないことが多い。過去にレースが中止となったこともあるだけに、予選でも一つでも上位につけておきたいところだった。
裕紀はまずレースタイヤでセットを進めながらタイムを出すが11番手と、Q2に進出するためには一つポジションが足りなかった。そしてQ1のセッション終了まで5分というところでタイヤを交換しコースイン。1分49秒616をマークし、9番手に食い込みQ2進出を決めた。Q2用のタイヤを使ったため、タイムを更新することはできなかったが、昨年はQ2に進出できなかったことを考えると、前進していることを実感させる結果となった。
決勝日は予想通り朝から雨と霧に見舞われ、朝のウォームアップ走行が中止となった。監督とライダーが集められ進行の説明があり、最悪は中止という可能性もあったが、何とかレース前に15分のフリー走行が設けられ、そのままスタート進行というスケジュールで進んで行った。
このとき雨はほぼ止んでいたが、路面はウエット。乾く方向だったが、無難な選択はレインタイヤだった。裕紀もピットからダミーグリッドに向かうサイティングラップはレインタイヤを履いていたが、ちょうどピットアウトする際、カワサキの渡辺選手と松﨑選手がスリックタイヤを履いているのが見えていた。ヨシムラの1台、そして中須賀選手もスリックを履いているように見えたと言う裕紀は、グリッド上でスリックタイヤに交換することを決断する。ところが実際には中須賀選手はレインタイヤを履いており、それを確認すると動揺を隠せなかったと言うが、チームスタッフとピレリタイヤのスタッフが“裕紀ならイケる!”と後押ししてくれ、“イクしかない!”と気持ちを切り換えた。
レース周回数は5周減算され15周で争われた。スタート直後、路面はかなり濡れており、いつ霧が出ても雨が降ってもおかしくない状況。できるだけ頑張ろうとするが、スリックタイヤを履いているだけにペースを上げることができない。オープニングラップは15番手につけていた。このとき、カワサキの渡辺選手はもう前に行っているかと思っていたが、実際は後ろにおり、4周目に抜かれて行く。
多くのライダーが走り風も強かったため路面は見る見るうちに乾いて行き、裕紀もペースを上げて行く。周回毎にポジションを上げ、10周目には5番手に浮上。ハイペースで追い上げて来た松﨑選手にかわされるものの、その後、中須賀選手、渡辺一樹選手、そして高橋巧選手を14周目にかわし3番手に浮上! そのままチェッカーフラッグを受け3位表彰台を獲得した。
高橋裕紀「今回のレースは、本当に難しいコンディションでした。日曜日はレースができるのか分からない天候でしたし、決勝前のコンディションでスリックタイヤで行くことは、一つの賭けでした。グリッドでチームスタッフ、ピレリタイヤさんが激励してくれたので気持ちを切り換えることができ、レースに集中できました。チーム、ピレリタイヤ、Hondaのおかげで表彰台に上がることができました。次戦も表彰台、優勝を狙えるように精一杯努力したいと思います。応援ありがとうございました」