最終戦鈴鹿を迎えた全日本ロードレース選手権シリーズ。例年よりも半月ほど早く、今年は気温も高かったためコンディションは悪くなかった。事前テストは例年通りなく、木曜日の特別スポーツ走行からレースウイークは始まった。
裕紀は走り始めから調子はよく、1本目で2番手につけると、2本目では3番手ながらさらにタイムを縮めていた。金曜日の1本目でもタイムを縮め2分08秒683を記録していたが、2本目のセットがいい方向にいかずにタイムを更新できなかった。
土曜日の公式予選では、マシンセットを戻してコースに出ていく。アタックに入ろうかというところで転倒があり赤旗中断。セッション再開後にタイムアタックに入り2分08秒392をマーク。その後、何度か2分08秒台を記録するが、このタイムがベストとなり予選は7番手につけた。
決勝日早朝のウォームアップ走行は、朝まで降っていた雨のためウエットコンディションとなったが、しっかり走り2番手。
決勝スタートは、このレースウイークで5回は練習したこともあり、その成果が出て3列目から一気に3番手に浮上。ブレーキレバーの感触もよく、序盤から積極的に前を狙う裕紀は130Rで荒川選手をかわすが、シケインで抜き返される。それでも続く2周目の1コーナーで再び荒川選手をかわすと、130Rで榎戸選手をかわしてトップに立つ。今シーズン初めてトップを走る裕紀は、ホームストレートを力強い走りで通過していく。スプーンカーブで國峰選手にかわされ、シケインでは榎戸選手がブレーキングで入ってくるが、そのまま國峰選手に接触し2台が転倒。裕紀は荒川選手に次ぐ2番手となり、後方からは渡辺選手とチームメイトの高橋巧選手が迫ってくる。
高橋巧選手のペースは速く、渡辺選手をかわすと、6周目の2コーナーで裕紀の前に出ていく。その勢いのまま8周目に荒川選手をかわしてトップに浮上する。残りは4周を切り、裕紀も前の2台を追うために全力でプッシュしていた。高橋巧選手がトップでゴールすれば大逆転でチャンピオンとなる。裕紀も2位に入れば、今シーズン目標にしていた1-2フィニッシュが現実味を帯びてきていた。
しかし、レースの神様は無情だった。9周目の110Rからヘアピンへのブレーキングに入っていく際、イエローフラッグが出ていたため前の2人のアウトからアプローチし、立ち上がり重視のラインを取ったところバンクさせた時間が若干長かったからか転倒を喫してしまう。裕紀のマシンは、そのままヘアピンのクリッピングについていた高橋巧選手のテールに接触し多重クラッシュとなってしまう。
まさか、こんなアクシデントの当事者になるとは裕紀自身も思ってもみなかった。全力で走っていた結果が最悪の形になってしまう。両者にケガがなかったのが不幸中の幸いでもあった。
高橋裕紀「チームが本当にいいバイクを仕上げてくれたので、レースは今シーズン最高の状態でした。今年は序盤に上位にいても下がってしまうレースが続いていたので、そうならないように頑張っていたら、トップグループについていけました。終盤になり巧選手のペースが速いことは分かっていたので何とかついていっていたのですが…。最高の結果を期待してくれていた皆様の思いを裏切る形になってしまい本当に申し訳なく思っています。また巧選手にケガがなかったことも不幸中の幸いでした。2023年もたくさんのご声援が力になりました。ありがとうございました」