自信につながったタイでのレース(予選:P.P. 決勝:優勝)-Buriram United Supersport 600cc
高橋裕紀の2015年シーズンは、ひと足早くタイでスタートした。今シーズン、裕紀は引き続きモリワキより全日本J-GP2クラスに参戦し2年連続チャンピオンを目指す。さらにアジアロードレース選手権SS600クラスにはMuSASHi Boon Siew Honda Racingからフル参戦することは、既報の通りだが、そんな裕紀にスーパーバイク世界選手権を初開催するタイのサポートレース“Buriram United Supersport 600cc"に出場する話しが舞い込んでくる。ヤマハからも全日本やアジアで活躍するライダーが参戦し対決ムードが盛り上がって来たところ、裕紀は優勝請負人として呼ばれていた。

事前テストがあり、1日半走ることができたが、このとき初めてプロダクションバイクに溝付きにスポーツタイヤを履いたマシンにまたがり、昨年、オープンしたばかりのチャン・インターナショナルサーキットを攻めることになっていた。「レーサーに比べると車重もあるので切り返しが重い感じがありましたが、ピレリタイヤのグリップも高く、限界も分かりやすいので乗りやすかったですね。コースも前半はツインリンクもてぎのような感じで、後半が流れるようなリズムが必要なコースでおもしろかったです」とファーストインプレッションをコメント。

レースウイークは金曜日に20分の走行が2本、土曜日に20分の公式予選を行い、夕方に決勝レースが行われるスケジュール。限られた時間だけに、マシンセットは最小限アジャストするにとどまっていた。また初日は気温39度、路面温度は60度まで上がり、夕方に行われる決勝とはコンディションが違い過ぎていたことも、その要因のひとつとなっていた。マッピングやエンジンを重点的にセットしながらも初日は両セッションでトップタイムをマークしていた。

土曜日の朝は雨が降り、一気に気温も30度まで下がりハーフウエットでの公式予選になるかと思われていた。実際、前に行われたスーパースポーツ世界選手権のフリー走行はハーフウエットだったが、コースインしてみると完全なドライとなっていた。裕紀は、スーパースポーツ世界選手権でもトップ10に入るタイムを出すことを目標にしていた。具体的には1分38秒台前半だったが、ベストは1分38秒893というものだった。それでも、ただ一人、1分38秒台をマークしポールポジションを獲得する。

15周で争われた決勝。裕紀はスタートでフロントを浮かせてしまい、やや失速。その隙に同じチームからエントリーしているタイ人ライダーのジャクリット・スワングスワット選手がすごい勢いで1コーナーに入って行きホールショットを奪うが、さすがにコーナー立ち上がりではらんでしまい、予選2番手の横江竜司選手がトップに浮上。1コーナーから2コーナーまでは、やや長いストレートとなっており、ここで裕紀はスワングスワット選手をかわすと、2コーナーで横江選手がオーバーランし、労せずトップに立つと、そのままレースをリード。2番手にスワングスワット選手が上がると、裕紀をピタリとマーク。全力で走っていた裕紀だったが、昨年、アジアロードレース選手権でランキング9位だったスワングスワット選手をなかなか引き離せない。レース終盤に意地を見せスパートをかけた裕紀は、レース人生で初となるウイリーゴールで優勝を決めたのだった。
【高橋裕紀選手コメント】
「プロダクションバイクも溝付きのスポーツタイヤを履いてのレースも初めてでしたから自分自身“どうなんだろう?"と疑問に思っていた部分がありましたが、思っていたよりも悪くなかったですし、自信につながりました。さすがに世界のHondaが造り上げたマシンですね。また新たな発見もできましたし、アジア選手権を戦う上で、いい経験をさせていただきました。直後にツインリンクもてぎのテストでMD600に乗ることもできましたし、乗り換えの心得が開幕前にできたのは大きかったです。この後、アジアと全日本のテスト、そしてレースが交互にあるハードスケジュールですが、チームと協力していい結果を出せるように全力を尽くします」