ついに最終戦を迎えた全日本ロードレース選手権。舞台は三重県・鈴鹿サーキット。裕紀はトップから12ポイント差の暫定ランキング3位につけていたが、現実的には、逆転タイトルの可能性は厳しいものだった。マシン的には、前戦の岡山ラウンドで大きく前進。そのときから鈴鹿に向けたリアサスペンションの仕様をいくつか試しており、10月半ばに行われたスポーツ走行でセレクトし、レースウイークでセットを詰めていき、いい方向に進んでいた。
土曜日の公式予選では、タイムアタック中に赤旗が出てしまい、タイヤの一番いいときを逃してしまう。それでも2分08秒781までタイムを縮め6番手と2列目を確保。レースに向けてサスペンションやジオメトリーの細かいアジャストを行い、決勝日朝のウォームアップ走行で確認。あとはレースを戦うのみとなっていた。
12周で争われた決勝。短い周回数ながらギッチリ内容の詰まったレースとなった。裕紀は、抜群のスタートダッシュを見せホールショットを奪うが、2コーナーで國峰選手、S字コーナー進入で南本選手にかわされ3番手でオープニングラップを終える。3周目には渡辺選手にかわさ4番手に下がるが、トップグループにつけ周回を重ねていく。
折り返しを過ぎた7周目にレースは動く。3番手につけていた渡辺選手がバックストレートで2台を一気に抜きトップに立つ。これに國峰選手も続き南本選手をパスしていく。裕紀もこれに呼応し、8周目の1コーナーで南本選手をかわし3番手に上がる。前では、渡辺選手と國峰選手がバトルを繰り広げていた。その周のシケインで國峰選手の前に出るとトップを走る渡辺選手のテールをマーク。最後の力を振り絞り勝機を探っていく。
そしてファイナルラップを迎える。裕紀は、最後のシケインで仕掛けることに決めていた。コーナーの立ち上がりで離されていたため、スプーンカーブの立ち上がりでは、なるべく早くマシンを起こし、タイヤのグリップを確認しながらアクセルを開けていく。“これならスリップストリームに入れる!”と思った瞬間、縁石ギリギリのところでリアタイヤがダートに落ちてしまう。砂煙を上げると加速が鈍ってしまい、國峰選手にかわされてしまう。
高橋裕紀「悔しいレースでした。渡辺選手と國峰選手と競り合っている時点で逆転タイトルの可能性はなかったので、とにかく勝ってシーズンを終えたいという気持ち一心でした。残り2周となったヘアピンで勝負しようと狙っていたのですが、デグナーカーブ立ち上がりでミスしてしまい仕掛けられず、最終ラップのシケイン勝負に切り換えたのですが、またもミスしてしまい万事休すでした。今シーズンは、イクイップメントを変更し、一からのスタートでしたが、チーム、NISSINさん、SHOWAさんが頑張ってくれたおかげでライバルと勝負できるところまで来られたのは大きな前進でした。今回も日本郵便さんを始め、多くの皆さんが応援に駆けつけてくれていたので、なおさら勝って終わりたかったのですが…。今シーズンも応援していただいた全ての皆さんに感謝いたします。ありがとうございました」