開幕戦を独走で制した高橋裕紀だったが、ライバルとの差は僅かなものと実感していた。第2戦岡山の事前テストでは、トップタイムを山口辰也選手が記録するなどライバルの包囲網も強力なものとなってきていた。ただ、あくまで決勝を見据えたマシンセットを進めており、岡山テストでは最後に試したセットがいい方向に行かずタイムを出せていなかった。その後発生した台風10号の影響を受け、第2戦岡山は残念ながら中止となってしまったが、第3戦オートポリスに気持ちを切り換えていた。
第3戦オートポリスは事前テストがなかったため、チームは前週のスポーツ走行に参加することを決め、チームメイトの小山選手と共に走行。まずは岡山テストの状態をベースにオートポリス向けにモディファイしたセットから走り始めた。目標タイムは、自身のJSB1000マシンでのベストである1分49秒台。スポーツ走行は3日間あったが、ドライで走れたのは、初日の午後と最終日だった。目標タイムは出なかったものの、ここでレース前にやっておきたかった仕分け作業ができたことは大きかった。
レースウイークに入るが、金曜日は悪天候で全セッションがキャンセルされ土曜日から走り出すことになる。今回は土曜日の午前中にフリー走行があり、そこでコンディションに合わせてマシンセットを進め1分51秒643でトップタイムをマーク。公式予選でもレースを想定し、タイヤの状態を確認しながらも、いきなり1分51秒台にペースを上げると計測5周目に1分50秒917をマーク。セッション後半に別のセットを試すもベストは更新できなかったが、コンスタントに1分51秒台をマークしライバルを圧倒する。
決勝日朝のウォームアップ走行で最終確認を行い、あとはレーススタートを待つだけだった。スタートに集中した裕紀は、好スタートを見せホールショットを奪うとレースをリードして行く。1分51秒台前半で走れば逃げることができるとチームと話していたが、スタート直後から岩戸選手と名越選手が背後に付いて来ていた。裕紀は、2周目に1分51秒376、3周目に1分51秒326をマークすると4周目に、このレースのファステストラップとなる1分51秒278を記録しライバルを突き放し独走態勢を築いて行く。
トップ独走となっても手を抜かず1分51秒台で走り続ける裕紀は、2位に約7秒の大差をつけ14周を走り切り、2戦連続ポールtoフィニッシュを達成したのだった。
高橋裕紀「今回も結果的に独走でしたが、全く気が抜けませんでしたし、自分のできる限りの走りをしました。勝つことができたのは、1週間前のスポーツ走行にチームが連れてきてくれたおかげです。チームとしてもトモくん(小山知良選手)と2クラス優勝できて、よかったですし、うれしかったですね。日本郵便の皆さんには、今回も応援席で声援いただき力になりました。親子バイク教室にも多くの方が参加してくださり感謝します。この調子で次回のツインリンクもてぎ、最終戦鈴鹿も最高の結果を求めて行きます」