予選:P.P. 決勝:優勝

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)2020年シーズン、高橋裕紀は日本郵便Honda Dream TPに移籍し、全日本ロードレース選手権に新設されるST1000クラスにフルエントリーすることになっていた。本来ならば4月に開幕する予定だったが、新型コロナウイルスの影響を受け、レースの中止・延期が次々に発表され、8月のSUGOラウンドでようやく新しいシーズンが開幕する異例の事態になっていた。

CBR1000RR-RST1000クラスは、エンジンは完全にストック。JSB1000クラスに比べて改造範囲が狭く、タイヤはダンロップのワンメイクとなっておりライダーの技量が問われるクラス。裕紀を始めとするHonda勢は、鳴り物入りで登場したニューCBR1000RR-Rを投入。3月下旬に鈴鹿サーキットでシェイクダウンしたときには、300km/hオーバーを記録しており、そのポテンシャルの高さを証明して見せていた。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)しかし、緊急事態宣言によって再び乗り始めたのは7月に入ってから。ツインリンクもてぎのスポーツ走行でテストを2日間行ったが、この時はほとんどウエットで、7月下旬に行われた事前テストも初日の午後の走行はキャンセルされるほどの大雨となり、2日目は、1本目はウエット、2本目はドライというコンディションとなっていた。いずれも裕紀がセッションをリードしトップタイムをマークしていたものの、走らせる時間が絶対的に不足しており、ニューマシンのポテンシャルを十分に出せる状況ではなかった。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)レースウイークに入っても雨が続き、初日のART走行、2日目の公式予選はウエットコンディションとなった。雨はそれほど強くなかったが、路面はかなりスリッピーなコンディション。裕紀は、計測5周目に1分39秒001をマークし、リーダーボードのトップに立つ。その後も走行を続けるが目標タイムには届かなかった。それでも、裕紀のタイムを上回る者は現れず、ポールポジションを獲得した。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)祝日の月曜日に行われた決勝。天気予報通り晴れとなり、真夏の暑さがスポーツランドSUGOを包んだ。路面温度は50度近くまで上がり、ST1000クラスの誰もが、この状況でレースラップを走ったことがない状況でスタートを迎える。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)裕紀は、ややフロントをリフトさせるものの、うまく加速しホールショットを奪うとレースをリード。このまま2番手以降を引き離して行こうとペースを上げて行くが、背後には星野選手が迫って来る。さらに後続の2台も追いつき、4台がトップグループを形成していた。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)ここで裕紀は「厳しいレースになるな、でも、まだ抜かれていない。転ばないギリギリの走りをしよう」と気持ちを切り換える。その直後、星野選手をかわし2番手に上がって来た作本選手がさらに距離を詰めて迫って来るが、馬の背コーナーで転倒。背後のエンジン音が、聞こえなくなったことと、サインボードで後続との差を確認。トップ独走状態となるが、ペースを落とすことなく1分30秒台でコンスタントに周回を続ける。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)そして14周目に入ったところで赤旗が提示され、13周終了時点でレースは成立することになった。裕紀は、全日本ST1000クラス初代ウイナーとなり、Honda CBR1000RR-Rにデビューウインをもたらした。

全日本 Round 1: -SUGO (宮城)高橋裕紀「みんなが思っているほど本当に余裕はありませんでした。一生懸命走った結果トップタイムということはありましたけれど、トップタイムだから余裕ということはなかったですね。決勝を見てもらえば分かるように、自分としてはスタートから後続を引き離そうとしていましたが、それができませんでしたから。初年度チャンピオンが目標なので、まず1勝できてよかったです。チームが頑張ってくれたおかげですし、現地に駆けつけてくださった日本郵便の皆さんを始め、応援してくださった全ての方に感謝します。最後に、レース中のアクシデントで急逝した岩﨑哲朗選手のご冥福をお祈りいたします」