奇跡的なドライコンディションでの開催で3位表彰台を手に入れた第3戦オートポリスから、約一カ月のインターバルを経て第4戦SUGOが開催された。JSB1000クラスは、今回も土曜日に予選・レース1、日曜日にレース2というスケジュール。
事前テストでは、右肩の再手術をしてから初めて1000ccのマシンをライディングすることもあり、調子を見ながらペースを上げて行く。昨年は雨だったこともあり、ほぼデータのないところからのスタートとなっていたため、タイヤを選別しマシンセットを進めていった。
レースウイーク初日はレインコンディションとなったが、ドライとは全く感触が変わってしまい、一からやり直しと言っていいほどの状況だった。
翌土曜日、朝から雨はほとんど止んでいたが、路面は前日まで降った雨の影響でウエット。この日レース1があるJSB1000クラスは、JP250、J-GP3に続き、3番目に公式予選が行われた。気温が低いためかなかなか路面は乾かなかったが、レコードライン上はほぼドライとなっていたため、スリックタイヤをチョイス。霧雨も時折パラつく中でのタイムアタックとなった。
まずは決勝用タイヤでセットを詰めながらアタックし、セカンドタイムとなる1分28秒360をマーク。セッション終盤にタイヤを変えてアタックするが、フィーリングが変わってしまい思うような走りができず、それでも何とか1分28秒079をマーク。両レースとも6番手グリッドを確保していた。
そしてレース1のスタート進行が始まる。ダミーグリッドから全車がウォームアップランに入って行く。路面は所々にウエットパッチがあり、気温が低いためタイヤに熱を入れようと、ライダーたちはかなりのペースで走っていた。そしてSPアウトコーナーを立ち上がったところで、裕紀の目の前を走っていた渡辺一樹選手が一気に横を向き転倒。裕紀もこれを避けることができず転倒してしまう。後方でも星野選手がクラッシュし、レースは仕切り直しとなってしまう。3人とも大きなケガがなかったことが不幸中の幸いだった。
赤旗が提示されてから5分以内にピットに戻らなければ再スタートはできないというルールのため、マシンを起こす裕紀。ハンドルは折れていたが、何とかエンジンがかかったため、ほぼアイドリング状態で10%勾配のストレートを上って行き無事にピットに戻ることができていた。しかし、メインマシンは使えず、スペアマシンに乗り換えて再びグリッドに向かった。
好スタートを見せた裕紀は、4番手につけ前を伺う。スペアマシンはメインマシンと同じ状態ではなく感触を探りながらだったが、何とかレース序盤はトップグループにつけていた。それより問題だったのが左腕だった。ウォームアップの転倒で思うように力が入れられなくなっていた。特に左コーナーが厳しかったため、徐々に離されてしまう。そこからは、走り方を工夫しながら何とかゴールにたどり着くために全力を尽くし、25周を走り切ったのだった。
レース2は、チームのおかげでメインマシンが修復され、左腕の状態も回復してレースに臨むことができた。前日よりもいい好スタートを見せ2番手に浮上。2周目の1コーナーで中須賀選手にかわされるが、その後はしばらく3番手をキープ。レース1と同じような展開となったが、アベレージで1秒ほど速いペースで走ることができたこともあり、レース1より2つポジションを上げ6位でゴール。大荒れのレースを何とか終えたのだった。
高橋裕紀「SUGOラウンドもいろいろありましたが、チームを始め、多くの皆さんの応援のおかげで乗り切ることができました。難しいコンディションでしたが、僕たちにとっては、味方になってくれた部分もありました。アクシデントは、仕方ない状況でしたし、大きなケガがなかったことがよかったと思います。この後は鈴鹿8耐モードに突入するので、精一杯戦えるように身体のコンディションを整えておこうと思っています」